【新唐人2010年5月7日付ニュース】韓国の哨戒艦沈没で朝鮮半島に緊張が走るさなか、北朝鮮の金正日(キム ジョンイル)総書記は4日間の訪中を行いました。今、中国・アメリカを巻き込んだ外交戦が展開されています。
「北朝鮮の訪問の狙いは沈没事件の悪影響を脱し、中国からの援助を手に入れることだ」と専門家はみます。
韓国の『聯合ニュース』によると、5日、金総書記と胡錦濤国家主席は北京の人民大会堂で5時間近くの会談を実施。胡主席は北朝鮮に六者協議へ戻るよう訴えました。
これに対し、金総書記は直接核問題に触れなかったものの、非核化の意思を表し、六者協議に戻る用意を強調しました。
その夜、両首脳は共に、金総書記演出の北朝鮮版歌劇『紅楼夢』を観賞。6日、金総書記は列車で北京を去りました。
金総書記は3日に中国に着いた後、大連と天津の工業団地を視察。これは約4年ぶりの外国訪問です。専門家は、「この訪問は沈没事件の悪影響を脱するのが狙いだ」と見ます。
この直前の4月30日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は上海万博の開幕式に出席。中韓首脳会談を行ったさい、胡首席は沈没事件に哀悼の意を表しました。
韓国の哨戒艦は3月26日、黄海を巡回中に爆発し、46名が死亡。韓国の『東亜日報』は5月6日、事件の国際調査委員会のメンバーの話として、魚雷と見られるアルミの破片が見つかったと伝えました。
亡命した北朝鮮の元高官、黄長燁(ファン ジャンヨプ)氏によると、この事件は朝鮮半島に混乱を起こそうとした金正日の仕業だと言います。
今回の金総書記の訪中は、韓国に懸念と不満を呼びました。韓国の外交通商統一委員会の委員長は4日、ワシントンで「中国は間違ったメッセージを送るべきではない」と述べました。
韓国・ハンナラ党代表の鄭夢準(チョン モンジュン)氏は「沈没事件のさなか、金正日の訪中を受け入れたことに失望し、憂慮する。中国側は韓国人の事件への怒りを伝えるべきだ」と言います。
韓国の『聯合ニュース』によると、韓国外交通商省の高官が韓国駐在の中国大使と会見し、遺憾の意を伝えました。韓国統一省の大臣は中国大使に対し、「朝鮮半島情勢が緊迫する中、中国はもっと責任ある役割を担うべきだ」と述べました。
けれど中国外交部の報道官は6日、韓国側からの抗議を否認しました。目下、金総書記の訪中に関し、中朝両国とも公式な発言をしていません。
韓国大統領府の報道官は6日、こう述べました。「中韓両国には外交摩擦も溝もない。我々は上海の首脳会談で自分たちの立場を伝え、密接な協力もしている」
金総書記の訪中は、アメリカの不安も招きました。アメリカ国務院の報道官は5日、「北朝鮮が義務・約束を守り、挑発行為をやめることを願う。だが、この会談の結果を見守りたい」と述べました。
韓国の『朝鮮日報』はワシントンの情報筋の話として、「この訪中は、アメリカ中国、そして朝鮮半島の激しい外交戦を招く」と伝えました。
また、核不拡散防止条約に参加した中国代表は、「六者協議の再開を望む」と述べました。金総書記は10月以降何度も、会談に戻る意向を伝えたそうです。
朝鮮問題に詳しい香港の評論家、李国成(リ コクセイ)氏はラジオ・フリー・アジアに対し「金正日はようやく協議に戻ることに同意しました。でも、一部の条件を中国指導部は同意していません。それでまた来たのです」
また北朝鮮にとって、中国からの援助は急務です。通貨改革の失敗や国連制裁で経済は崩壊寸前。今年の食糧不足も深刻で中国への貿易依存度も75%に達します。
北京の外交筋は、この訪中の見返りとして、中国は10万トンの食糧援助を与えるとみます。これは去年中国から輸入した食糧の約3割で、6000万ドルに相当します。
時事評論家 史東
「統治下の北朝鮮は挑発的で、経済は崩壊寸前、核実験も強行し、北朝鮮の人々の生活はさらに厳しくなりました」
専門家はこう見ます。「沈没事件発生後、韓国の経済援助は難しくなり、国際社会も北朝鮮に厳しい目を向ける。金総書記の健康不安説、後継者問題などもある中、金総書記が唯一頼れるのは中国しかない」
新唐人記者がお送りしました。